ふたたび「隗より始めよ」

レストアに着手するBMW-EV。

広島支部/藤井 智康

EVクラブ会報での報告も12回目になりました。当初はEVに興味はあっても、メーカー車がない時代。「隗より始めよ」の精神でデロリアンをEVにコンバートしようと広島支部を立ち上げ、みんなで苦労しながら作り上げたのが昨日のことのようです。とにかく楽しかったし、最高の経験でした。

あれから12年。EVデロリアンは今もアップグレードを続けています。一方でEVを巡る環境は、コンバートからメーカー車にシフトしている印象があります。性能も飛躍的に向上しており、わざわざガソリン車をEVにコンバートするメリットは少なくなりました。

でもやはり、魅力的な旧車に乗り続ける手段として、コンバートEVにこだわりたい…。そこで広島支部では、今回、コンバートEVのレストアに着手します。かつて「オートメカニック」誌の企画でハリー山崎さんがコンバートしたBMW E36を、知人が連載終了後に人づてに売却を打診され購入。2013年6月から広島にあります。とてもしっかり作ってあるEVですが、中国製のリチウムバッテリーが劣化し充電できなくなり、今は不動状態です。そこでリーフのバッテリーに積み替える作業を行い、ノウハウを身につけます。

BOX内の中国製リチウム電池を換装します。

一緒に手がけるのは、広島市内に本社を置くディーラー。近く具体的にプロジェクトをスタートさせ、リチウムバッテリーの積み替えや、CHAdeMO充電が可能になる機器を取り付けて一気にモダン化させる計画です。このBMW-EVはすでに車検を取得しているため、昔の規制基準が適用されます。感電防止の対応も私たちのノウハウで可能なので、頑張って仕上げていきたいと思っています。

しかし今後、新規にコンバートEVを手がけようとした場合、今の規制基準だと個人での車検通過はまず無理とされています。感電防止の安全協定「R100-2」にパスできないのです。唯一の対応策として(一社)JIMAの試験を受け、安全要求8項目を認定してもらう「R100-02認定制度」にパスすれば改造申請が認められる、という流れになるそうです。ただし広島で頼むとしたら、認定試験料に加え、東京から検査官を呼ぶ出張費などがかかり、負担が増します。

そこで事務局に提案します。EVクラブも国交省と交渉し、「R100-02認定」が出せる制度を創設してはいかがでしょうか。全国にいるEVクラブの会員はコンバートEVの時代からのベテランが多く、EV製作や感電防止のノウハウを持っています。会員が認定試験を行えるようになれば、わざわざ東京から検査官を呼ぶ必要がなくなります。全国にいるEVクラブの会員が検査官となれるようになれば、EVクラブもJIMAと並ぶ権利を持つ団体となり、メーカーEVとは違う形でEV普及に向けた活動や地域産業の活性化に貢献できます。

広島支部は、これまで関東以外で活動している会員が「やっぱりEVクラブに加入していて良かった」と思えるものが欲しい、と主張し続けてきました。メーカーEVが普通に買えるようになった今、コンバートEVづくりから始まったEVクラブの特性が活かせる仕組みづくりを、ぜひ進めていただきたいのです。ご検討のほど、よろしくお願いいたします。

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