フリーライター 篠原知存
「百万台EVプロジェクト」のことを知ったのは、昨年秋に日本EVフェスティバルの会場で行われた公開ディスカッション。自分が乗りたいEVがないなら、作っちゃおう、という提言だった。そんなことできるの!?と驚いたが、会場には実際の手作りEVがずらり。どの車も魅力的で、とくに旧車のコンバージョンは、カーライフの新ジャンルだと感じられた。
私がEVユーザーになったのは、ホンダeのデザインに惚れての衝動買い。なので「乗りたい車」という言葉はすっと胸に入ってきた。乗ってみたEVは、静かで俊敏でエモーショナルな乗り物だった。充電インフラなど取り巻く環境が日々刻々と変化しているのも刺激的。
今後、自分でEVを作るかどうかはわからないけれど、「百万台EVプロジェクト」がどう広がっていくかはとても楽しみ。EVシフトが現在進行形のいま、「自分たちの未来は自分たちでつくる」という決意は、とても大切なことだと感じている。
会社員 井上雅央
小学生の時は親の車を完璧に車庫入れするのが自慢。最初のマイカーは18歳で免許取得直後に解体屋で見付けた、車検が半年残ったマークⅡ。以降、バイト代をすべて整備工具と中古のセリカ、フェアレディZに注ぎ込んだ。自動車メーカーの開発部門に就職した後は、軽四輪からフェラーリまで世界中の車を試乗できた。欲しくなったのは、小さく軽く重心の低い車。でも初代プリウスに乗って、環境への優しさに開眼。加速やハンドリング性能はもういいと思った。還暦を過ぎた今は、身の丈に合った優しい車と気持ち良く過ごしたい。最近は市販EVの選択肢も増えたが、どれも大き過ぎ、華美過ぎ、高価過ぎで欲しくならない。メーカーの利益確保には止むを得ない戦略であることも理解できる。
中古のフィアット500をEVに改造した。ほぼ一人で土日と長期連休を使い約1年で終えた。誰でもとは言わないが、ある程度の知識と体力があれば安価にできることを確認した。問題は車検取得手続き。高電圧を扱うので安全確保の必要性は理解するし、審査官の規則を勉強しながらの指導にも感謝するが、長い期間を要する上に、会社員では断念せざるを得ない認証費用が最大の壁か。例えば、100台規模で同じ仕様の中古車を同様に改造し、莫大な認証費用をシェアするなど、クラブのメンバーの知恵を借りて「突破口」を探りたい。自作コンバートEVの高い壁を壊すことが、「100万台」実現のひとつの鍵ではなかろうか。
大学教員 深谷信介
太い川が流れている。
少しずつ上流に向かうと、川と川との合流点に出くわす。その1つを遡っていくと、また、川の合流点。川幅は細くなり、流れる水の勢いは増していき、源流の一滴にたどり着く。清々しい気持ちになる。
EVは、今その川のどの辺りにいるのだろう。
そう、自動車創世期より電気自動車はあった。第3の波と呼ばれ、EV元年だと言われたのが、確か2009年。そして、今2022年。便利で快適がお客さまの願い、効率化と顧客満足が提供者の目的。そんな時代を50年か100年か、ひた走りに走り抜いてきた資本主義は曲がり角。VUCA(変動性が高く、不確実で複雑、さらに曖昧さを含んだ社会情勢を示す)と叫ばれ、走るべき方向は未だ見えない。
移動は人類の歴史。クルマはその束の間の役割なのかもしれない。否。であればこそ、砂漠を走破できたり、サーキット場で能力を発揮できたりするコミュニティカーとは、なんだろう。給油一回で1ヶ月以上走れるタンク容量とは、何か。急速に充電する必要性とは、どこにあるのだろうか。
私たちは、これからどういきていくのか。いきていくべきなのか。EVを通じて、いつも舘内代表はずっと私たちに問いかけ、そのヒントを発信し続けてくださっている。
会社員 中村さつき
ガソリン不足だけれど電力供給は安定しているウクライナ東部のハリコフに住むフリマクさんは、SNSで希望者を募り、EVで駅や避難所への移動の手助けをしている(読売新聞2022年3月18日夕刊)。
EVって「ただのクルマではないまったく新しい価値の移動手段」のはずなのに、クルマ脳(失礼)でとらえるから、「充電が面倒」「遠出できない」「高い」なんて筋違いなことも言われるし、メーカー側も腰が引けている訳で…。今までのクルマのカタログや試乗インプレッションだけでは、EVの良さを十分に伝えられない気がします。「トルクが大きい? それ、いらないので」という私の言葉に絶句してしまったN社の説明員さん、「速い」とか「パワーがある」とかではなくて、「EVを選ぶと楽しい&良いことがこんなにたくさんありますよ」というお話をお聞きしたいです。
移動の自由を守りつつ、環境負荷を減らしていけるように社会的EV力を高めましょう!
日産オーナー歴11年、私にピッタリなのは「コンパクト」「フル充電で200km走れる」「安全性に優れている」+「乗って楽しい(必須条件)」EVです。皆さんの「これ」もぜひお聞かせください。
百万台EVプロジェクト、色んな世代や立場や環境の皆さんでアイデアを出し合って作り出す理想の1台は一体どんなクルマ? 楽しみです!
●『日本EVクラブ会報 2021』 トップページに戻る