基礎充電の充実がEV普及の鍵
広島支部/藤井 智康
今年で製作から15年目を迎えたEVデロリアン。いまだ国内唯一をキープしています。コロナ禍が終息に向かい広島に旅行者が増えてきたため、EVデロリアンに乗っていると話しかけられる機会が増えました。なんだか久しぶりの感覚です。
2022年度の広島支部は、EVユーザー最大の課題「基礎充電」充実に取り組みました。既設マンションに電動車用の普通充電器(200Vのコンセント)を32基設置した結果、85区画ある駐車場すべてで充電が可能になったのです。首都圏以外では初の事例です。EVに乗る住民が2人しかいない状況で、最終的に合意を得られるまでには、長い道のりがありました。
EVデロリアンは2009年の完成当初から、自宅外に保管場所を確保してきました。自宅マンションの駐車場に充電環境がなかったためです。管理組合には毎年のように、充電用コンセント設置を要望し続けてきましたが、「必要とする住民が少ない上、設置が高額」「使った分の電気代徴収が難しい」という理由で何度も却下されました。2014年と2019年に住民アンケートを実施した際も、ほぼ「総スカン」でした。「EVに乗る人が半数を超えたら考えてもいい」という意見もあり「充電環境がないとEVが選べない(から増えない)状況なのです」と説明しても、理解は広がりませんでした。
ところが、2021年12月に充電インフラ整備のための補助金を含む令和3年度補正予算案が成立し、状況が一変します。申請した上で集合住宅にEV・PHEV用充電設備を導入したら、工事費用の全額、充電器機の半額に補助金が出るという制度が始まったのです。あまりにも好条件だったので、改めて理事会を説得したところ、当時の理事長から
●全住民が等しく使える設備であること。
●一部に先行設置するやり方は、後でトラブルになる可能性があるので避けてほしい。
という条件が叶うなら進めてもいい、という了解を取り付けました。
そこで2、3区画ごとに共用できる充電用コンセントを設置することで、全区画で充電可能となる設計案を住民に提案。制度の内容と電動車の利点を説明する文書を配布したり住民説明会を開いたりした上で、8月に住民アンケートを実施した結果、初めて賛成が過半数を超えました。11月の臨時総会で事業案が承認され、工事も年内に完了。2023年4月から充電サービスの運用が始まりました。結果として事業費1,200万円のうち約1,000万円が補助され、住民負担は1世帯2万円以下で収まりました。
電気代徴収など充電環境の維持は、ユアスタンドさんにお願いしています。充電用の電気を新たに引き込み課金も直接行うため、電動車を使わない住民に負担をかけることはありません。PHEVを含む電動車が普及してきたら、皆さんに喜んでもらえるはず、と思っています。今後も、既設マンションにも充実した基礎充電環境が構築できるモデルケースとして、さまざまな機会で情報発信していきます。
このほか1月に広島市中区であった「広島輸入車ショウ2023」では、特設コーナーに並んだ15台を前に、EV相談コーナーを開設。主催者からの依頼で2日間対応しました。来場者の反応を見ていたら、「え?いつの間にこんなに沢山の車種が?」と「マンションだから充電がねぇ」という声がほとんど。日本がEVの分野で取り残されてる状況がよく分かりました。現状を打破するためにも、まずは基礎充電のインフラ普及が求められていると痛感しています。
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