EVでの旅を終えて みなさんからの一言

7日間に及んだ、東京から洞爺湖までのEVでの旅。
今回のキャラバンに参加して頂いた、ドライバーのみなさんと、レポーターの木野さんに旅を終えての率直な感想を頂きました。

斎藤聡 「今後の普及に期待」
石井昌道 「EVのビッグウェーブは目の前!」
片岡英明 「エコドライブの楽しさを知った旅」
熊野学 「2台のEV」
津々見友彦 「舘内代表の先見性に改めて感心です」
国沢光宏 「EVの鬼コーチを目指します」
齋藤慎輔 「身近なことからエコを考えよう」
薄井武信 「この世は殺生。」
木野龍逸 「進化への期待と、普及への不安」


斎藤聡(フリーランス・ライター)
「今後の普及に期待」


楽しかった。何しろEVで一般道を走るのは、ほとんど初めての経験といってよく、走り出しはまったくの手探り状態だった。乗ってみると、思いのほか走りやすく、しかも快適。低速トルクがあるので、今の交通状況の中でも十分に流れる乗ることができるし、実用的であることを実感した。

何より普通に…つまりアクセル操作やブレーキ操作はガソリン乗用車とほぼ同じ感覚で…走れるということ。素晴らしく運転しやすく、ガソリン車との違和感も最小限にとどまっている。考えてみれば当然なのかもしれないが、自動車メーカーが作ったものだけに、そうした使い勝手の部分の作り込み巧さには改めて感心させられた。

しかも、これはEV独特のものだが、走るうちに回生ブレーキの使い方がだんだん分かってきて、そうすると電費も伸びてくる。電費のイメージが作れると、エアコンも安心して使えるようになる。エアコンを使って驚いたのは意外なほどの省エネであること。もちろん省エネ性能を高めるために改良しているわけだが、そういった細かな改良によって、本当にすぐにでも実用化できそうなところまで、EVが熟成していることが実感できた。

もうひとつ驚きとともに嬉しく感じたのは、関係者だけでなく、さまざまな人がEVに関心を持ち、興味を示してくれたこと。まったく新しいカテゴリーとして登場するEVを、寛容に受け入れてくれそうなムードが急速に出来上がりつつあることも実感できた。数年先には、きっとこんなことを書いたのが気恥ずかしくなるくらい世の中にEVが普及しているのではないだろうか。

今回は本当に貴重な、そして興味深いキャラバンに参加させていただき感謝に耐えません。日本EVクラブを始め三菱自動車、富士重工業、東京電力ほか協賛各社の皆様。また立ち寄り地で応援してくださった、たくさんの皆様に改めて感謝いたします。ありがとうございました。

トップに戻る



石井昌道(モータージャーナリスト)
「EVのビッグウェーブは目の前!」


EVキャラバンのなかでもっとも印象的だったのは、イベント等で出会った一般の方達の反応でした。これまでEVは過小評価されていると勝手に思いこんでいましたが、実際には全く逆で、大いに期待がかけられている。もしかすると過大なほどに。

EVを発売する自動車メーカー、電力会社、インフラ整備に協力する各企業などは、目前に迫ったEV本格普及にむけて一層気を引き締めてかからねばならないでしょう。

そして私個人としても、メディア側の者として正確な情報を発信できるよう努力しなくてはなりません。想像以上のビッグウェーブに飲み込まれないようにしなくては!!

トップに戻る



片岡英明(モータージャーナリスト)
「エコドライブの楽しさを知った旅」


多くの人たちの手助けと、沿道の人たちの後押しで、無事にイベントを終えることができました。ありがとうございます。私が担当したのは福島から盛岡までの区間です。2日間で約300kmの道のりでした。イベントの1週間前に発生した、岩手・宮城内陸地震の被害地も被災者への激励の意味を込めて走らせていただきました。

出発式は今までのEVイベントとは比較にならないくらい盛大なもので、そのスケールの大きさにビックリ。たくさんの報道陣が詰め掛け、応援団も松沢成文神奈川県知事や構成作家のテリー伊藤さんなど、そうそうたる顔ぶれでした。「こりゃ失敗は許されないな」と思ったものです。

そして2日目の福島で2台のEVと再会。初日にステアリングを握るのはスバルのR1eです。走り始めは少々不安でした。1充電で走行可能な距離は80kmだったからです。道中には山坂もあるから、バッテリーを使い果たして立ち往生したら大変だ、と、不安に駆られました。が、それは杞憂でした。電池容量は少ないけどバッテリーの電力消費を抑える走りをすると航続距離が伸びるんです。最初の充電を行ったとき、不安は解消しました。そして電力消費を抑える運転が楽しくなったのです。クルマの流れに乗り、先の道路状況を読みながらの運転は車との一体感さえも感じました。これは2日目に乗ったiMiEVにも言えることです。こちらは1充電での走行距離が長いので、積極的に走ることができました。2台の性格は大きく違うのですが、共通しているのは瞬発力が鋭く、静かなことです。そしてエコドライブによって電力消費を抑えることの楽しさも実感できました。

EVのエコドライブはとても楽しい、それを実感した旅でした。このイベントを応援してくれた人たちの熱い視線も忘れられません。私は、これを期にEV購入の貯金を始めました。EVを買って日本一周エコEVの旅に出ようと真剣に考えている、今日この頃です。

トップに戻る



熊野学(自動車技術解説者)
「2台のEV」


今回のキャラバンでは、三菱のi-MiEVとスバルのR1eに乗った。両車とも軽自動車をベースにした開発されたEVであるが、異なるところをも多い。それは、ベースとなった車両の特徴を引き継いでいるからでもある。

両車の主要な相違点は、乗員数と駆動輪である。i-MiEVは4人乗りの後輪駆動であり、R1eは2人乗りの前輪駆動である。このため、i-MiEVは車体後部にモーターを搭載し、R1eは車体前部にモーターを搭載する。
乗員数が異なるからボディサイズも異なる。i-MiEVが3395×1475×1600mmのボディサイズに対して、R1eは3285×1475×1510mmである。R1eはi-MiEVより、全長が110mm短く、全高が90mm低い。ボディサイズの違いは車両重量にも現れており、i-MiEVの車両重量の1080kgに対して、R1eの車両重量は920kgと160kgも軽い。
車両重量の差が160kgもあるのは、バッテリーの搭載量が異なるからでもある。バッテリーの搭載量の差は、1充電当りの航続距離に表れている。i-MiEVの航続距離が160kmに対して、R1eの航続距離は80kmと半分なのだ。バッテリーの搭載量に違いはその搭載位置が異なるからでもある。i-MiEVでは長いホイールベースの床下に、隙間無くバッテリーを搭載しており、R1eは車体後部の狭い荷室に搭載している。

両車の航続距離の違いは、EVとしての狙いが異なるからだ。i-MiEVは市販を前提として開発されたが、R1eは東京電力のサービスカーとして企画されたからである。サービスカーの1日当りの走行距離は短く、80kmの航続距離で十分なのだ。
このようにバッテリーの搭載量が大幅に異なるが、総電圧はR1eの方がi-MiEVより若干高い。i-MiEVの330ボルトに対して、R1eの346ボルトなのだ。両車のバッテリーは共にリチウムイオン電池であり、1セル当りの電圧はほぼ同じであるから、総電圧の差は直列数の差にあると考えられる。
モーターの出力は、車両重量の重いi-MiEVの方が若干高い。i-MiEVのモーター出力は47kWに対して、R1eのモーター出力は40kWなのだ。R1eは、バッテリーの搭載量を少なくして車両重量の増大を抑制し、その分モーターを小型化している。
一方、i-MiEVは航続距離を重視してバッテリー搭載量を多くし、増加した車両重量に対応してやや強力なモーターを搭載しているのだ。ちなみに、i-MiEVの加速性能は、ターボエンジンの「i」より0→80km/hで1.5秒も速い。

以上のように、i-MiEVとR1eは同じく軽自動車をベースとしながら、様々な部分が異なる。強いて言えば、i-MiEVは長距離ランナーであり、R1eはスプリンターである。ただ、電気消費量を重視した2日間の走行では、両車の動力性能の差は感じなかった。両車に違いは走行音にあり、R1eのロードノイズが気になった。

トップに戻る



津々見友彦(モータージャーナリスト)
「舘内代表の先見性に改めて感心です」


今回の洞爺湖キャラバンで感じたことは、改めてEVの「静粛性の高さ、バイブレーションの無いスムーズな走り、力強い加速性能」などコンフォートな走りの性能でした。更に、エネルギー回生が出来る点はすごい!とても得した気分になれます。実際、その気になれば省エネドライビングが効果的に出来、電費を稼ぐ楽しみが実感できました。

一般的にフツーのレシュプロエンジンの場合、省エネ運転は我慢運転であまり楽しいものではないのですが、EVの場合、回生のためシフトダウンが重要で、かつ、スポーティにも感じられ、楽しんでドライビング出来ました。CO2を直接的には全く出さないクリーンなクルマの走りも優越感を感じました。短距離の使用なら明日にても使えそうな気がします。

私にEVの正しいドライビングを教えてくださった東京電力の姉川さん、三菱の堤さん、また我々ドライバーを支えてくださった舘内さんはじめ、チームクルーの皆さん、有難うございました。

それにしても14年も前にEVに注目した舘内さんの先見性に改めて感心し、その時代が来たことに感激しました。

トップに戻る



国沢光宏(自動車評論家)
「EVの鬼コーチを目指します」


私はEVの「鬼コーチ」になりたいと思っている。みんなで「EV凄い! エラい!」の合唱じゃ鍛えられないと思い・・・。弱点をビシビシ指摘して行きたい。

もちろん目標は「EVの実用化」。ただ今回のキャラバンで自分自身、EVの可能性を実感した。今までEVは狭い地域だけしか使えないコミューターだと考えていた。サッカーチームなら「頑張れば東京都代表なら通用するかな?」みたいなイメージである。
しかし! 1時間以上一般道を元気一杯で走り、さらに数十km単位の走行可能距離を残すEVのハンドルを握ってたら「鍛え方次第じゃもっともっとEVの可能性広がるぞ!」と鬼コーチになりたくもある。今まで走行距離を伸ばそうとした場合、バッテリー量を増やすことに主眼が置かれてきたものの、効率を追求するというアプローチもあるということである。急速充電だって実用域に入りつつある感じだ。

と、ここまで考えて、
「そんなことEVクラブの皆さん達はとっくにやってきたことばかりですよね!」。
ここ数年EVクラブのイベントに参加させて頂いているが、今回の電費追求エコ走法もEV耐久レースでさんざんやってきたことだ。とは言えヨチヨチ歩きの頃からEVを育ててきた皆さんからすれば、手の届かない所に行きそうで少し寂しいかもしれない。でもEVが普及すれば性能の良いバッテリーを手軽に入手出来る。舘内代表が次なる「難しい宿題」を出してくれることだろう。

トップに戻る



齋藤慎輔(モータージャーナリスト)
「身近なことからエコを考えよう」


洞爺湖サミットも閉幕しました。
連日のニュースで、EVで走った洞爺湖の周辺が映し出されて、そこでの走行シーンが思い出されます。空気は澄み、心地よい風の中での滑るような走りは、 思ったとおり快適でした。坂が多いので消費電力だけには少し気を使いましたが・・・。

もっとも、サミットにおける温暖化抑制に関わる成果は、どうもなかったに等しいように見受けますが、なにもトップダウンであることだけが成果をもたらす術ではなく、まず一人一人の意識が大切でしょう。これが、たとえば、利益最優先の企業の姿勢をも動かすことにつながってくるかもしれないのです。

EVの技術は著しく進化し、我々も楽しいドライブを堪能しましたが、課題がないわけでありません。エアコンやヒーターなどの快適装置を稼働させたままで航続距離をさらに延ばすことも望まれますし、いずれ寿命に至るバッテリーの廃棄やリサイクルといった行方、また、日本の電気の多くは化石燃料によって生み出される(発電)ことから、走行時はゼロエミッションでも、充電をするには、少ないとはいえ、その分のCO2を排出することになります。夜間電力はCO2を発生しない原子力発電が主ですが、それを昼間でも補える多くの原子力発電所開発を促進するのは、反対意見も多いのは承知の通りです。

私も、かつてはEVに懐疑的な一人でした。しかし、机上でああだこうだといっていても、本当のところはわかりません。まずは体験してみること。そこから始めなければなにも生まれてこないのです。多くEVに触れてその進化も見届けてきたことで、可能性を見いだせるようになりました。

まずは始めること、それが技術を進化させ、製品を生み、インフラの充実をもたらし、あらたな文化を生み出す・・・かもしれません。私も、いまだEVが今後の自動車の主力になるとは思ってませんが、都市での移動、通勤あるいは配送における移動手段の一部を担うことから始めて、それが広がっていけば、そこからまた何かが生まれると思っています。なにより、EVは自動車としての運転の楽しみも自由度も、いささかも削がれていないのは、ドライバーとして嬉しい限りです。

東京に戻ってきて、いつもより幹線や首都高速が、かなり空いていることに気づきました。原油高騰の影響が、一般生活の移動手段にまでに波及してきていることを実感します。エコについての必要性が身近に実感できるいまこそ、EVにちょっと思いを巡らせてみてほしいと思います。

トップに戻る



薄井武信(日本EVクラブ会員)
「この世は殺生。」


あっという間にゴールしてしまいました、CO2EV洞爺湖キャラバン。
事前に心配されていたよりもはるかにクルマもドライバーもよく走り、つまらないぐらい?あっけなく完走できました。私の一番の任務は「予定通りクルマを進めること」で、航続距離的に厳しそうな区間を運転する予定でしたが、その必要もないほど力強く走り切ってしまいました。

もうセカンドカーとしては十分な性能です。
それどころかむしろ、日常の通勤・買い物はこの軽EVでまかない、大人数で旅行に出かける時などはレンタカーでミニバンを借りればいい、と積極的に考える人が増えてくる気がします。大は小を兼ねると言いますが、日常の大半を大きいクルマに一人で乗るのはCO2排出の見地からも、経費の面からも合理的ではないでしょう。そんな現実的なことを感じたEVキャラバンでした。

私たちの生活はもうエネルギー消費から逃れられません。しかしこれからは「消費」ではなく「殺生」という意識を持つことが大事だと私は思っています。「消費」は被害者意識しか産まないからです。一方「殺生」は加害者意識としっかりと向き合うことになります。自然界の生物は本来、殺生しながら生きていくものだと思います。エネルギーも然り。ありがたくお命を頂戴するのです。

電気自動車と関わって14年。自分の意識が変わったことで、私はガソリン車の乗り方を始め、エネルギーの使い方が変わりました。ずーっとガソリン車に乗り、頭であれこれ考えるだけだったら、あれこれ理由を付けて何も変わらなかったと思います。今後EVが普及することによって直接CO2削減するだけでなく、EVに触れることによって多くの人々の意識が変わり、自然と共生できる世の中に向かっていくのでは、と期待しています。

トップに戻る



木野龍逸(CO2削減EV洞爺湖キャラバン ライター兼カメラマン)
「進化への期待と、普及への不安」


7年ぶりの、EV追っかけ旅だった。

7年前には、日本EVクラブが実施した「2001年充電の旅」のEV-Aクラス(日本EVクラブ製作)を追いかけて、北海道や鹿児島まで行った。鉛電池のEV-Aクラスは30〜40kmおきに充電のために民家などに立ち寄っていたが、行き先はその都度、状況に応じて決めるので、アッチに行ったりコッチに行ったり、妙な冒険要素のある旅だった。

今回の洞爺湖キャラバンでは、一応、急速充電ができるポイントがいくつもあり、立ち寄り先も決まっていたのだけど、旅は何が起こるかわからない。 渋滞はどうか、道は走りやすいのか、そもそも次の所までたどり着けるのか。 などなど、不確定要素はいくつもあった。そんなアクシデントを予想しつつ、ある部分では期待しつつ、2台の電気自動車を追っかけていた。

フタを開けてみると、拍子抜けするほどのノンアクシデントだった。予想以上のEVの走りに驚き、何もアクシデントがないことにがっかりし、ドンドン進んでいくEVを撮影しながら追いかけるのが、意外に大変なことを思い知った。

で、ふと思った。 「EVはもう、旅っていうより、移動手段になるものなんだな」と。 クルマなんだから当然といえば当然なんだけども、三菱自動車と富士重工業という自動車メーカーが作ったEVは、諸元の性能通りに走る、歴とした移動手段になっていたことを知った。

そしてまた、地方の販売店などで見た、EVへの反応の良さにも驚いた。期待度はなかなかに高かった。ほんとうに売れるのかもしれないと、ちょっと思った。だからといって普及するかどうかは予断を許さない。いいものが普及するとは限らないのが、現代社会だから。けれども、せっかくモノができてきたのだ。EVを活かせるような社会になるよう、少しでも協力していければと、個人的には思っている。

トップに戻る