2023年5月~2024年4月まで 私目線のEVレポートです
古川 治(神奈川県)
この期間、多くの海外へ行った。インドネシア、マレーシア、インド、香港、アメリカ、そしてドバイ。
今回は実際に海外へ行き、肌で感じたEVトレンドをいくつか報告させていただきたいと思います。
・インドネシア
インドネシア・バリ島。インドネシアはバイクが非常に多い国。バイク(スクーター)はクルマより排ガス規制が基本的に緩い。数が少ないうちは良いが、この国のようにほとんどの人々が生活の主な足として利用し大量のバイクが街で溢れると、それは空気が非常に汚い。国もようやくこの問題に取り組み始めたようで、私が行ったときは特定のエリアでの電動バイクのライドシェアに加え、バイクのライドシェアや一般の電動バイクもチラホラと見かけた。インドネシアでの「EV」はナンバープレートの下のほうに青い帯があるのが目印。自身が現地でライドシェアを呼んだところ、偶然にも数少ない電動バイクが来た。しかも街から街へ約20㎞のロングライドだったので、その乗り心地や電池の性能なども確認することができた。2人乗りでもパワーは十分で電池も十数パーセント減ったのみだった。当然ながら静かで、振動がないことがこれほどまでに疲れを感じさせないことを改めて実感。
電動バイクは中国製で、実は電気自動車も中国製がインドネシアに攻め込んで来ている。日本では、「五菱 宏光mini EV」で有名となったメーカー五菱(Wuling・ウーリン)である。街中では、Wuling Air EVを多数見かけた。ショッピングモールではHYUDAIのIONIQ6が展示販売されており、充電インフラも国が整備を始めているようでインドネシアもいよいよ内燃機から電気へ動き出しているのが手に取るように感じられた。
・アメリカ
毎年、11月にラスベガスで行われるSEMA SHOW 及びAAPEXというトレードショーに行った。
SEMA SHOWは、ドレスアップ系のパーツのトレードショーであり、車の趣味性を主としたもの。
AAPEXは、整備・塗装・修理など、車のメンテナンスを主としたもの。
今回のロサンゼルス空港からの移動は、TUROという個人貸渡アプリ(日本でいうANYCA)を使い、テスラモデル3ロングレンジ前期型を借りて、ロサンゼルス→ラスベガス→アリゾナ→ロサンゼルスという1250マイル(約2000㎞)の旅程計画。
テスラモデル3ロングレンジ“前期型”を借りた理由は、ある程度走行距離数を重ねた古めの個体(借りた車は7万マイル・11万キロ超)で実際に走り、充電速度や電池の劣化度合でどれだけ不便さを感じるのか体感するためだ。
結論から言うとなんの問題もなく極端な距離短縮も感じることができなかった。それに加え、アメリカ西海岸エリアにあるテスラのスーパーチャージャーネットワークと充電ポイント1か所あたりの充電器数の多さのおかげで非常に快適な旅だった。また、スーパーチャージャーの設置場所はだいたいガソリンスタンドやコンビニ、ショッピングモールといった施設にあり、充電中も有効的な時間を使うことができる。アメリカでは、やはりインフラも同時に自ら構築しているテスラの強さを改めて感じた。
ひと昔前は、プリウスばかりだったカリフォルニアは、プリウスがごっそりとテスラに入れ替わったという印象。
SEMA SHOWは、コンバートEVがさらに充実しておりプレーヤーも増えていた。特に、エコ視点というより、V8の延長線上にEVがあるような感じでハイパフォーマンス・ハイパワーな作品が多数あった。ここには航続距離が云々、急速充電が云々、という話は皆無であり、まずはワクワクするものを、楽しいこと、新しいことへの挑戦を称賛する雰囲気が漂う。
一方、AAPEXではメーカー製電気自動車の修理・診断に力を入れる商品とシステムが多数出展されていた。
これから、世界で電気自動車の整備・修理が増えることとなり、専用ツールやその教育システムなどに前向きに取り組む姿勢が見られた。
ショーの後は、アポイントを取っていたグルーバーモーターカンパニー(アリゾナ州)に立ち寄る。ここは、恐らくアフターマーケットでの世界一のテスラ修理専門店で、特にロードスターの修理で世界中から車両が入庫している。実は私の経営するOZ MOTORSでもテスラロードスターの修理案件があり、その打合せで立ち寄ったのだ。
到着すると、まずは最新のセットアップをした最高のテスラロードスターでドライブしてきなさい、と。
思えば自身がテスラロードスターを最後に運転したのは10年前。ハンドルを握り走り出すと、まさにその時の感動が蘇った。
工場を視察させていただいたところ、ハードウェアエンジニア、ソフトウェアエンジニア、デザインエンジニアが在籍、そして空調も効いたスーパークリーンな作業場、まさにこれからの電気自動車専門のワークショップである。日本でもこのようなサービスを提供していきたいと強く感じた。
・さいごに
世界を見れば、電気自動車というものは既に大きな広がりを見せており、「特別なモノ」ではなくなりつつある。
いや、地域により既に特別なモノではない。
日本においては、電気自動車は普通の選択肢としてはまだ少し距離あるものと感じる。しかし、OZ MOTORSをやっていて感じることは、電気自動車から内燃機関へ戻れない人々や、電気自動車への未来に大きな期待をしている人々も多数いらっしゃること。その想いを大切に受け止め、私はこれからも世界をこの目で見て体感し、我々ができるEVアフターマーケットでの挑戦をし続けていきたいと感じています。
コンバートEVに始まり、昨今リーフバッテリーアップグレードサービスも実現することができました。現在、手ごろな軽トラ用コンバートEVキット、テスラなどのメーカー製EVの専門的な修理、中古EVの電池の見える化などを計画中。EVライフに貢献できるサービスを実現してまいります。
Photo by OZ Osamu Furukawa
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