戦争とエネルギーを考える
松本支部/岡部 匡伸
松本もやっと春らしくなってきました。これから活動する季節になるのですが、このところあまりやることがなくて活動らしい活動もありません。開店休業です。
会員レポートの締め切りが近付いた頃に、思ってもみなかった戦争が始まりました。いろいろ別のアイデアはあったのですが、ニュースを見ていたらEVの話題を書けなくなりました。日頃博物館をやっている関係で歴史には親しんでいますが、まさか2022年にもなって1939年のヒトラーのポーランド侵攻を思わせる戦争がヨーロッパで起きるとは思いませんでした。第2次大戦後も、かつての東西冷戦の頃の代理戦争や国境紛争、内戦など、戦争が絶えたことはなく、大国が介入したこともありますが、いわば「領土的野心」で大国が隣国に攻め込むという、19世紀の帝国主義的な戦争は過去のものになったと思っていました。
いや、過去のものになったからこそ、戦争の本当の恐ろしさを体でわかっている人たちがいなくなったからこそ、戦争で解決しようという人が現れてくるのでしょう。昭和のなか頃までの政治家は、保守、革新に関係なく、「戦争だけはやめとこうよ」という思いがあったように思います。決して、アメリカの言いなりで軟弱だったわけではありません。
92歳で亡くなった母に、戦後70年の時にいろいろ話を聞いたことがあります。戦時中は川崎市の郊外にいたので、それほど怖い思いはしなかったそうですが、服を着替えずに、枕元に靴を置いて(これは地震対策には有効だそうですが)眠り、警報が鳴ると近くの竹やぶや、水のない用水路などに逃げていたそうです。このとき、母がぽつりと言った「逃げないと死んじゃうからね」という言葉が忘れられません。こうして母が生き残ってくれたから私がこうして原稿を書いていられます。今を生きている私たちは全員第2次世界大戦の生き残りです。戦争は決して遠い世界の出来事ではありません。
母の言葉からは、命のやり取りをするのが戦争なのだということが伝わってきます。ウクライナが戦果を挙げるということは、ロシアの兵隊が死ぬということなのです。攻め込まれたら戦うしかありませんが、どちらが勝っても不幸であることに変わりはありません。
それにしても、エネルギーや天然資源がどれだけ戦争を招いてきたかということを思い知らされるこの頃です。小学生の頃に経験した石油ショックの原因も中東戦争でした。あらゆる物価が上がるのは困りますが、それほど驚きはしません。EVが普及して石油の消費が減っても、今度はバッテリーやモーターに使うレアメタルが戦略物資になります。温暖化対策はともかく、たくさんのエネルギーを使う生活が続く限り、本質的な解決にはならないように思います。
最後になりましたが、当支部の代表を発足当時から務めました横内照治は、本年度を以て代表を退任し、私、岡部が2代目に就任することになりました。よろしくお願いします。
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