臨時スペシャルレポート2
■TEXT:YORIMOTO YOSHINORI
■ ヤクサル。
「ヤクサルの肉は赤いんだ。牛よりもずっと赤い」。
永田地区のポンカン畑にある作業場で充電させていただいた渡辺さんが教えてくれました。ヤクサルは屋久島の大切な自然の一部ですが、一方で「害獣」として駆除されているそうです。
役場の元職員の方にうかがった話によると、サルを生け捕りにしてしまうと、動物園も引き取ってくれないし、大学の実験動物としてもそれほど数は引き受けてくれず、島に暮らす人の生活を守るには、ある程度「駆除」するしかないということでした。さらに、サルも大変なんだけど、今、屋久島では本来は島にいないはずのタヌキが繁殖して困っているそうです。
タヌキの肉はボクも食べたことがあります。子供の頃、焼き肉好きだったボクは、親戚の家で「これは珍しい豚肉なんだ」とだまされて、タヌキとウサギの肉を食べさせられました。タヌキの味は「なんだかやけに固かった」ってことしか覚えていませんが、タヌキを食ってしまった事実と、オヤジも含めた大人たち親戚一同に騙されたことが、すごくショックだったのを覚えています。
■ 子供の遊び。
子供の頃、公民館の裏手にある狭い空き地が遊び場でした。公民館の非常階段は、ときにボクらの秘密基地の屋根になり、ときには札幌宮ノ森ジャンプ競技場になりました。小学校5年生の頃だったでしょうか。仲良しだったマコとボクは、階段の何段目から飛び降りて、きれいにテレマーク姿勢を決められるかを競ったものです。
屋久島一周111.6キロメートル。今日、僕らがEV-Aclassで走った距離です。EV-Aclassが「クルマ」だとすると、1日で、しかも約12時間をかけて走りきるには、なんとも陳腐な距離にしか過ぎません。EVになんてまったく興味のない人から見れば、まさに「子供の遊び」みたいな距離でしょう。今、ボク自身はとても大きな達成感と満足感にひたってるんですが、EVに否定的な考えを持つ人なら、たかが1日100キロをビクビクしながら移動しなければいけないEVなんて、乗り物とすら認めたくないところでしょう。
「そうじゃないんだ!」と、屋久島一周を果たした楽しさを書き連ねたりすることもできるのですが、なんだか、今のボクは「そ、EV-Aclassって子供の遊びみたいな乗り物なんだ」と認めてしまおうという気持ちになっています。なんたって、今のボクのうれしさは、非常階段の6段目から飛び降りて笠谷みたいなテレマークを決めた小学校5年生のような気持ちなのです。大人たちに自慢したところで「階段から飛び降りるなんて危ないからやめなさい」と怒られるのがオチでしょう。
子供の遊びで結構です。それでもボクは夢中になれるし、6段目からの飛躍に成功した自分には、葉っぱの金メダルをあげようじゃないですか。EV-Aclassは、永田から尾之間まで約50キロ、西部林道を越える難所を無充電で走りきりました。永田までの間で体感した「コツ」を駆使して、できるだけ電気を大事に使う運転を心がけたのがよかったんだと思います。オレってEV名人じゃんって気分です。
■祈り。
EVを否定するヤツはバカです。EVを押しつけるヤツもバカです。原発の問題点を知ろうともせず「それはダメ」といいながら原発製の電気を使ってるヤツもバカなら、事故が起きたら自分も死ぬって知ってるくせに「しょうがないだろ」と反対するヤツをバカよばわりするヤツもバカです。
いろんなバカを挙げていくと、最後には、人間はみんなバカってことになるのでしょう。
しょうがないですよね。今はただ、目の前の肉がタヌキじゃないことを祈りつつ、非常階段の7段目から飛び降りるための勇気を、夢中で絞り出すことにしたいと思うのです。
※ちょっと興奮気味で、今夜は気合いが入りすぎてよくありません。しかもパソコン調子悪いし。明日は総会-屋久島二元中継。隣のベッドでは木野おぢさんが本を読みながら墜ちてしまいました。寝ます。
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