第1回 「EVと地球環境・エネルギー」
中学生EV教室-電気フォーミュラーカーを作ろう!-第1回「EVと地球環境・エネルギー」
開催日:2007年5月26日(土)晴れ
開催場所:都立総合工科高等学校(世田谷区)
2007年度の中学生EV教室のテーマは、「電気フォーミュラーカーを作ろう!」です。土曜日の午後を使う全4回で、環境問題と自動車との関わり、EV(電気自動車)の基本的な知識を学び、後半では実際に製作したEVの試乗なども予定しています。
中学生EV教室は、世田谷区教育委員会による体験教室のひとつ。クルマをテーマにしたのは、今回で3年目になります。これまでは、EV、ハイブリッド車をテーマにしてきました。
3年目となる教室で製作するのは「EVフォーミュラカー」です。
フォーミュラカーとは、純粋に“走る”ことを目的にした、つまり走る、曲がる、止まるの性能を極限まで追求した、タイヤがむき出しになったスタイルのレーシングカーです。
教室では、ホンダが数年前に20台ほどを製作した「サイドバイサイド」というレーシングカーをEVに改造します。その過程でモーターの製作なども体験し、最後は筑波サーキットで「日本EVフェスティバル」に参加し、ラップタイムを競う筑波最速EV選手権に出場します。
第1回は、東京世田谷区の都立総合工科高校で、環境問題に関しての講義と、EVレーシングカートのERKおよびハイブリッド車(ホンダ・シビックハイブリッド)の試乗会を開催しました。
講義では、日本EVクラブ代表の舘内端が講師を務め、地球温暖化について解説しました。
講義では、見えない、臭いもしない二酸化炭素(CO2)が地球を暖めており、そのCO2はエンジンで動く自動車などから大量に排出されていること、CO2 はどのようにしてクルマから生成されているのか、今後は石油(化石燃料)が枯渇していくなかでどのような対応が必要なのかなどについて、ときおり専門的な 部分まで突っ込んだ説明をしていきました。
近年、小学校、中学校では環境教育に力を入れているためか、子供たちの中には温暖化について詳しい知識を持っている生徒もいるようでした。
座学終了後には、化石燃料を構成する要素のひとつ、HC(炭化水素)について、「HCは何の略か?」と舘内代表に質問している生徒もおり、舘内氏を驚かしていました。
CO2が温暖化の原因物質だということもほとんどの生徒が知っており、時折メモをとりながら講義を熱心に聞いている姿が見えたのも印象的でした。
講義の後はERKの試乗とシビックハイブリッドの同乗走行を実施しました。
ERKは初心者でも乗ることができるようにパワーを抑えていましたが、それでも生徒たちは速さに驚いていました。
シビックハイブリッドの試乗では、初めてハイブリッド車に乗る生徒も多く、静かなことやモーター併用時のパワー感に感心していたようです。
試乗と併せて、総合工科高校のガレージでは、EVに改造するサイドバイサイドの車両について説明しました。
初めて見るフォーミュラーカーを興味深げにのぞき込む生徒、車体をカバーしているフェアリングをはずして、素材のFRPについて質問する生徒、運転席に乗り込んで笑顔を見せる生徒などサイドバイサイドの第1印象は上々のようです。
そして「サイドバイサイドの横にシートを作って、そこに君たちが乗るんだ」という説明には、ちょっとしたどよめきがありました。
フォーミュラカーの横に乗る機会は、オトナでもそうそうあるものではありません。中学生でそうした体験をすれば、クルマへの興味、ひいてはクルマと環境問 題の関係に対する関心を呼び起すことにつながれば、大きく変わることになるだろう将来のクルマ社会に、新たな可能性が生まれるかもしれません。
舘内代表からは、最後にこんな言葉が出てきました。「25年後、君たちが大人になった頃には、大変残念なんですが、地球がたいへん暮らしにくくなってま す。クルマを動かし、発電している石油が、ないかもしれない。たいへんに厳しい。でも、工夫をすれば、楽しく生活できる可能性も残っている。それを勉強し ましょう」
「まず、仲良くなること。次は、地球温暖化についてしっかり学びましょう。3つめは、石油がなくなることを知りましょう。そして4つ めは、そんな状況でも工夫すれば楽しく生活できることを学びましょう」 この4つを学ぶことが、将来のクルマ社会の創造に少しでも寄与するのかもしれませ ん。そんな中学生EV教室が始まりました。
(txt:木野龍逸)