第3回 「EVをつくる-2」
中学生EV教室-電気フォーミュラーカーを作ろう!-第3回「EVをつくる-2」
開催日:2007年9月29日(土)
開催場所:都立総合工科高等学校(世田谷区)
今回のEV教室の講義は、EVの性能を決定づけると「電池」について学びました。講師は三洋電機で先進電池開発を担当している雨堤(あまづつみ)徹さんで す。開発拠点のある兵庫県淡路島から、遠路はるばるお越しいただきました。ちなみに三洋電機は、リチウム電池などの小型高性能電池では世界最大のシェアを もつトップメーカーです。
講義に続いての実技では、EVフォーミュラカーの組み立てを体験しました。走る事に特化したフォーミュラカーは構造がシンプルなうえ、カバーがかかっていないので各パーツが見えやすくなっています。組み立て体験にはもってこいの素材といえます。
まず講義では、電池の構造や電気が発生する仕組みを解説。そもそも基本的な化学知識がないと理解するのは難しい内容で、「簡単なところから難しいところまで 一気に行きます」という雨堤さんの言葉に生徒たちはちょっと驚いたようでした。そして時間が経つにつれてさすがに集中力が落ちてきていましたが、一部には 最後まで注意深く聞いている生徒の姿もあったのが驚きでした。
ところで雨堤さんからは、電池の種類、基本構造、基本的な発電の仕組みに続き、今回のEVフォーミュラカーに使用するリチウムイオン電池についての説明がありました。
EVフォーミュラカーに使用するのは、すでに量産されている小型の汎用リチウムイオン電池です。電動ドライバーなどの電動工具に使われている電池です。単三電池ほどの大きさの円筒形の充電池を見たことのある人は多いと思います。
電動工具はこれを数本単位で使用しますが、EVフォーミュラーカーでは合計2000本を搭載します。これにより、パワーを決める電圧は小型リチウム電池50 本分(3.7V×50本=175V)になり、航続距離を決めるエネルギー容量は約40並列分の9.99kwhになります。競技速度で走った場合、数十キロ を走行可能な容量です。また、10・15モードと呼ばれる燃費・排ガス測定用の走行では100km近く走れます。
講義に続いては、生徒たちの好きな組み立てです。今回は車体のメインフレームに足回り部品、モーターおよびデファレンシャルギア、ステアリング周辺部品、シート、そしてカウルを取りつけました。
身体を動かす作業はみんな好きなようで、講師の先生の言葉を聞き、工具を握りしめて取りつけ作業をしていく顔は、いつものように真剣そのもの。工具の使い方 も慣れてきているようで、何もいわなくても自分たちで適当な工具を選び、どんどん手順を進めていきます。覚えが早いのは、おとな以上かもしれません。
最後にカウルをつけると、フォーミュラカーの形になりました。まだ配線などをしていないので走りませんが、できあがった姿を見た生徒たちはさすがに顔が緩んでいます。シートに座った顔は満足そうに笑っていました。
次回は、茨城県の筑波サーキットで、日本EVフェスティバルの見学です。
text:木野龍逸