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第2回 「EVを作る-1」

中学生EV教室-電気フォーミュラーカーを作ろう!-
  「第2回「EVをつくる-1」モーター理論とモーターの組立
開催日:2007年7月21日(土)
開催場所:都立総合工科高等学校(世田谷区)

photo今回の教室のテーマは、EVの心臓部である「モーターの原理と構造」です。
講師は、日本EVクラブ会員で自動車メーカーで開発を担当している椛澤明さんと、モーター製造装置などの開発を手がけている、三工機器の加藤良雄顧問のお二人。ともに、ハイブリッド車やEV開発の第一線で活躍している人たちです。

まずは、椛澤さんから、モーターの原理と仕組みについて説明がありました。
内容は、大人が聞いても理解するのが容易でなく、さすがに子供たちは首をひねっていました。そんな中で、いくつか重要なポイントがあったので、ここではその概要を紹介します。

まず第1のポイントは、前回の教室でも触れたように、CO2排出量は増大しつつあり、とくに先進国では一人あたり排出量が増えている。そして今後は確実に、 中国やブラジル、インドなどの進展国(途上国)の排出量が増えるため、今のままのクルマ利用を維持するのであれば、いますぐに燃費を2~3倍にする必要が あるということです。
加えて、今後の人口増を考慮すると、燃費は05年度比較で約4.7倍にしなければならないそうです。

その手段はいくつか考えられますが、燃費4.7倍を達成するとなると、方法が限られます。
まず、既存の内燃機関(ICE)のうち、ガソリンエンジンはどうでしょう。
これは、手を変え品を変えた効率向上策が出尽くした感があり、大幅な効率アップは望み薄です。
次に、話題のディーゼルはというと、これまであまり開発が進んでいなかったので、ある程度の効率向上が期待できます。しかし排ガス対策にコストがかかるため、実際に販売するとなると課題もあります。
そしてハイブリッドは、誕生から間もないこともあり、電気系のシステム、あるいはエンジンと統合したシステム全体としても開発余地が大きく、大幅な効率向上 が望めるとのこと。電池は、今は高価ですが、電気製品の一種ではあるので量産効果によってコストダウンの期待がもてます。

ハイブリッド車や電気自動車でかなめになるのが、電池とともに、今回のテーマのモーターです。「モーターは、簡単にいえば、エネルギーの変換装置です」と椛澤さんは説明します。
つまり、電気エネルギーを駆動力に変える働きをしているのです。今後は、この変換効率向上がキーポイントになります。

続いて動作原理の説明がありましたが、中学生にはさすがに難しかったようで、ちょっと目がうつろになっている生徒も見られました。一方で、一緒に聞いていた大人たちは、「なるほど」と改めてモーターについての知識を深めていました。

講義に続いて、実際にモーターを組み立てました。
モーターは、ホンダのシビックハイブリッドが搭載しているものを使用しました。
今後、EV教室で製作するEVフォーミュラには、このモーターを4つ組み合わせたものを使用します。

さて、この組み立て実習ですが、けっこうたいへんな作業になりました。
モーターは、おおまかに分けてローター、ステーター、ローターに組み付けるベアリング、回転を感知するためのパーツ、それらを挟み込むプレートなどで構成されています。

ローターは磁石のかたまりです。磁石はネオジウムという種類の鉱石を加工したもので、非常に強力な磁力をもっているのが特徴です。工具なども、10cmほどの距離なら吸い付けてしまいます。組み立ての際には気を付けないとケガをすることもあります。
そのためモーターの組み立てには、三工機器で製作した特殊な治具を使用します。

まず、治具にプレートを固定し、ローターを組み付けます。
次に、ステーターを仮組みするためのスペーサーを入れ、スペーサーに合わせてジャッキをかまし、その上にステーターをのせます。あとはスペーサーをはずしてジャッキを降ろしていき、プレートを組み付けたら、治具をはずして完成です。

と書くと簡単そうですが、これがたいへん。生徒たちも目が真剣で、無口になっていました。
組み立てはA班から順番に完成まで行っていく予定でしたが、予想外に時間がかかり、A班だけで終了予定時刻近くになってしまいました。

そこで、組み立てたモーターの分解を、B班から順番にやっていくことにしました。
すると、それまで黙って観察していた生徒たちの目が急に生き生きとし、工具を手に手に取ってワイワイ言いながらモーターに群がってきました。

「プレートを取ったら、次はレゾルバだよ」
「ジャッキを入れてステーターを上げるんだ」
「ジャッキを上げる時は、全部を同時に上げるんですよね」
などと言いながら、なかなか器用にモーターを分解していきます。みんな、ちゃんとA班の組み立てを見ていたようで、手順も抜かりありません。
加藤さんや椛澤さんも感心することしきりでした。
子供が機械をいじくるのが好きなのは、今も昔も変わらないようです。
日本のもの作りも、まだまだ捨てたもんではないなと感じました。

もちろん、モーターの原理や組み立てを一回で完全に理解するのは大人でもムリです。
それでも、本物に触れることによって少しでもモーターやクルマへの興味、理解が深まれば、また記憶の片隅に体験したことが残れば、中学生EV教室の意義があったというものでしょう。

 

(text;木野龍逸)

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