3つの驚き ・・・津々見友彦(自動車評論家)
会長の舘内さんから誘われて、初めてドライブしたEVには3つの驚きがあった。ひ
とつは「低速トルクの高さ」だ。電気モーターの特徴だが、発進から蹴飛ばされるよ
うなトルクは「レシュプロエンジン(ピストンエンジン)」の体験しかない私には驚
き!特にEVカートのあのまさに“曙に蹴飛ばされる”ような発進時の加速感はロケッ
トスタートそのもの。恐怖すら感じるそれだ。
更に低速トルクがある故に、ミッションレスでも走れること。レシュプロではとて
も出来ないワザだ。低速のヘヤピンコーナーから高速コーナーまで、サーキットは速
度差が大きく、通常なら忙しいレーシングコースでギヤシフトなしで走れ、純粋にハ
ンドリングとスロットルワーク、それにブレーキングだけに神経を集中できロスのな
いドライビングが出来る。
その2は「振動のなさ」だ。これはレシュプロエンジンのレーシングマシンやカー
トの体験者には驚きの新事実。エンジンをフレームにソリッドマウントされているレ
シュプロの振動はすざましい。特にカートの場合は肺が微振動で咳き込んでしまうぐ
らい。その点EVカートの場合、スムーズで実に心地よく走れる。 第3には「静粛性
の高さ」。電動モーターなので当たり前だが、私にはこれも非常に新鮮だった。静か
なレーシングマシンでは楽しくないのでは?と言う疑問もあったが、とんでもない。
スピード感はレシュプロのそれと変らないし、モーターの微かなうなりと、“ヒュー
ン”と甲高いギヤノイズが興奮を誘う。そして、この「振動のなさと静粛性」がドラ
イバーの無用な疲労をなくし、それどころか、ピットにいても疲れない。
実はレシュプロレーシングマシンのピットにいると実に疲れるのだ。が、EVレーシ
ングではピットに居ても全く疲れない。だからこそ、ピットカフェが成り立つ。
今回はEVフェスティバルで、グッドアイディアだと感心したのが、この「ピットカ
フェ」まるでヨーロッパのサーキットにいるようなお洒落な雰囲気が楽しいし、そこ
にいても疲れないのがいい。マシンとの距離もぐっと近い。
EVレーシングはまさに新しい時代のモータースポーツと言えるだろう。今述べたよ
うにドライバーやピットクルー、それに観客にも地球環境にも優しい。
「でもレシュプロレーシングマシンに比較するとやはりEVマシンは重く、マシン性能
が低いのでは・・・。」と疑問の声も聞こえそうだ。確かに、純粋にマシン性能だけ
を比較するとその通り。だが、地球環境のみならず我々人間に有害な排気ガスを出し
てまで速さを競うのは、はたして許される時代なのだろうか?
新しい時代のEVやモータースポーツを求めて沢山の熱心なEVエンスージャストの皆
さんがマシン造り励んでいるのは心強い。
05年のEVフェスティバルではラッキーにもERKとダイハツ ミゼッットII をドライブ出来
たが、更に、嬉しいことに中学生チームも製作を手伝ったEVフォーミュラ、「小電友」
もドライブ出来た。従来はパワーレスで、大人しいマシンだったが、パワーアップさ
れまたタイヤサイズも上げられ、見違えるように力強くなりその偉力は絶大!
まず、コーナリング限界が高まり、コーナーでのスピードが、段違いに速い。コー
ナー脱出では低速から加速が出来、“ヒューン”と心地よいモーターとギヤサウンド
でストレートを飛ばしに飛ばせ、140.9km/hの最高速をマークし、不調の他のフォー
ミュラマシンを尻目に優勝出来た。お陰で、製作に携わった中学生諸君と一緒に表彰
台に立て、私にとっても05年最大の嬉しいイベントだった。舘内さん、EVの仲間の皆
さん、それに中学生諸君、有難う! |