そうるいばいおます
閖上を出て、仙台市の沿岸部にある南蒲生浄化センターへ行った。オーランチオキトリウムによる、藻類バイオマスの、世界の、実用化最前線だ。この旅へ行くことが決まった時、私が真っ先に考えたのが、EVスーパーセブンでここを訪ねたいということだった。
閖上から南蒲生へは、津波に踏みつぶされた田園地帯を横切って行く。トラックにもまれてEVスーパーセブンを走らせると、震災直後から、テレビのニュースで何度も見た風景が目に飛び込んでくる。
藻類バイオマスというのは、炭化水素=石油を生成する「力」をもった植物プランクトンのような「藻」を培養して、石油を作ろうという試みだ。オーランチオキトリウムは、筑波大学の渡邊信(まこと)教授らの研究グループが、2010年に発見した新種。かねて知られていた石油を作る藻の、ざっくり10倍もの石油を作る力をもっている。
藻類バイオマスは、いわば、21世紀の錬金術だ。
オーランチオキトリウムは、光合成ではなく、有機物を食べて増殖する。南蒲生浄化センターでは、オーランチオキトリウムと、光合成で増えるボトリオコッカスという藻類を組み合わせて、藻類バイオマスによる石油製造プラントを実用化するための開発と研究が行われている。
有機物を餌にするオーランチオキトリウムを、都市の有機物が押し寄せる汚水処理場で実用化するのは、理にかなっている。
ただ。
個人的には、オーランチオキトリウム実用化の研究開発なんてことは、こうして仙台市のプロジェクトとして進むだけではなく、国を挙げて、高速増殖炉の研究より大規模に、リニアモーターカー建設よりも広範に、原発の津波対策よりも迅速に取り組むべきだとも感じている。
「藻類バイオマス技術開発実験室」は、津波で破壊された汚泥処理施設の一角を、白い壁で仕切られた小さな「部屋」だった。
ともあれ。
仙台市と筑波大学、東北大学の協力プロジェクトとして、オーランチオキトリウムの実用化に向けた研究は、ここで着実に進みつつある。
平成27年度、広大な浄化センター敷地の隅っこに、パイロットプラントを建設するのが、国の補助金も出て進められている今のステップだ。
浄化センターと実験室を目の当たりにして、感じたことはいろいろある。
が。
ここで調子に乗って書こうとすると今夜も寝られなくなってしまうので、改めて、日刊SPA!の不定期連載『日本をつなげ!プロジェクト』などでまとめてみようと思う。
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浄化センター周辺の道で、除塩作業が進められている田んぼの風景を見た。
道路をかさ上げする高さを示す櫓が組まれていた。
土木工事頼みの景気対策はいかがなものかという批判がある。
気仙沼の港に、海と生活を遮る防波堤を建設することには、個人的にも疑問を感じる。
新しいインフラよりも今ある道や橋の維持管理が重要だと声を荒げる人もいる。
何を作り、どんな世の中にしていくかということに、模範解答のような正解はない。
「義」を主張しようとしても難しい。
「理」はますます通らない。
でも。
「利」が絡むとぐいぐい進んだりもする。
震災復興は、「義」と「利」がうまくシンクロする場面でもあるのだろう。
いや、何が言いたいのかというと、津波で被害を受けた浄化センターを立て直すとき、いち早くオーランチオキトリウムに注目し、汚水処理と藻類バイオマス実用化のシンクロを実現させた、仙台市当局ご担当者の見識と行動力のすばらしさをたたえたい、ということだ。
酒とか呑みながら、藻類バイオマスについて熱く語ってしまうことがある。
が。
「なんだか、難しくてよくわかんねえや」とあまり関心をもってくれない人がいる。
だから。
このきじのたいとるはひらがなでわかりやすくかいてみた。
いちいち、うざいものいいできょうしゅくだが、しいてきにわかりやすくすると、すごくわかりにくくなることがある。
よのなかは、もっとけんめいになるべきだと、たびをしながらつうれつにかんじている。
原子力発電にかけているお金をシフトすればもっと進むはずですよね!
なるほど、わかりにくいですね(笑)。