誰が充電器を設置するのか?
千歳市内で、北海道で最初の充電。
【北央三菱自動車販売 千歳本店】
前地点からの距離:39.2km 旅の総走行距離:994.3km
森の中に忽然と姿を現した大きなディーラー。月並みだけど、これもまた、さすが北海道! と感じる風景だ。さっそく充電を始め、店内でメールのチェックなどをしていると。。。
EVスーパーセブンの姿を見つけた藤本治聖(はるきよ)常務が話しかけてきてくださった。
拠点ディーラーの指揮官として「現場」を知り尽くしている藤本さん。まずは北海道のエネルギーやEV事情についての話を聞かせてくれた。
と、ふと話を中断して、
「あなたは、どうしてこんな旅をしてるんですか?」と逆質問。
私はフリーライターで、長くEVを取材していて、EVをネタにした記事も書くので、仕事、です。と説明すると、なるほど、それならあなたはEVで「得」できるわけだ、と藤本さん。
じゃあ、もっといろいろ話すとね、と、
藤本さんがさらに続けてくれた話は、まったく共感できる「課題」に満ちていた。
旅続きで疲れた頭で下手にまとめようとしても混乱しそうだから、箇条書き的に、藤本さんが提示してくれた課題を列記しておきたい。
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千歳本店ではi-MiEVなどの電気自動車を4台導入して使っている。でも、都市間の移動距離が長く、厳しい冬がある北海道で、一般のユーザーにはむやみにEVを勧めることはできない。
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藤本さんは自動車が大好きで、だからこそ、EVの普及は絶対に必要だと思っている。
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最近、温暖化対策などの名目で、自動車は燃費至上主義。とはいえ、燃費を向上させるために燃料の量を絞るから、テキパキと走らないし暖房の効きも悪いクルマが作られている。技術立国日本が作る自動車がこれでいいはずはない。
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EVを普及させるために急速充電器の普及は必要だ。とはいえ、どこに充電器を設置するかといったインフラとしての計画には、行政の確固とした方向性が不可欠。
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ところが現実には、急速充電器設置の費用負担などは、われわれのような事業者に強いられている面があり、国の決定の方向性が中途半端ではないかと感じる。
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つまり、国や行政のインフラ対策は、結局は土木事業が中心になっている。以前、灯油が不足した冬に各家庭に20リットルほどの灯油を配る施策があったが、北海道の冬ではそんな量の灯油は2日もあればなくなってしまうからほとんど無意味。EVや急速充電器の普及についても、しっかりと「現場」の状況を踏まえて確固とした手を打たないと、結局は無駄遣いに終わってしまうのではないかと懸念する。
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ガソリンスタンドと同じような考え方で充電器を設置しようとする考えもあるようだが、急速充電はガソリンスタンドのような商売にはならない。千歳本店では300万円をかけて急速充電器を設置したが、実情はボランティアのようなもの。
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北海道には、北海道ならではのEVや急速充電器を普及させるやり方があるはずだ。幹線道路の峠の麓に、誰が急速充電器を設置するのか。事業者に負担を強いるばかりでは決してうまくいくはずがない。特区のように、北海道をある意味で特別扱いした国の補助だって必要かもしれない。
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北海道の冬は寒い。だからこそ、エネルギー問題は切実だし、EV普及も願っている。だからこそ、役人さんもしっかりと考えて、北海道ならではの急速充電器設置方法を確立してほしい。
。。。
藤本さんは来客をお待たせしたまま、憤懣やるかたないといった表情で話してくれた。
藤本さんの言葉は、私自身、EV取材をするなかで感じていることと共通する点が少なくない。旅の応援ブック『EV時代の夜明け』に書いた内容ともほぼ一致している。
お話しした時間は、ほんの15分ほどだったろうか。
なのに、この熱さと厚さ。
藤本さんの熱さもまた、EV時代が夜明けを迎えようとしていることの証だろう。
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