110km、走破。
倶知安を出発。次の充電スポットである八雲までは110km。事前計画では、一充電最長区間となる。
この旅は、すでに全国に整備されている急速充電器をできるだけたくさん実際に使ってみて、「ほら、もう手作り電気自動車でも日本一周できるくらい、急速充電器網は整備されているんですよ」ということを証明するという目的がある。一回の充電で長距離を走ることは一義的な目的ではないから、搭載した電池の量もリーフの半分ちょっと。厳密なデータを実測してはいないが、計算上は、一充電あたりの航続距離は100〜130km程度と想定している。
つまり、110km走るのは、限界に近い挑戦だ。
実は、青森県から苫小牧に入り、函館から青森県に帰るルートを選んだのも、この「倶知安ー八雲」間が全体としてやや下りになっているからだった。ルートを計画する時には、長くても80kmと上限を仮定して充電スポットを探していった。でも、青森からフェリーでアプローチして北海道に入る、または抜け出すためには、どうしてもこの区間を通るしかなく、途中にほかに急速充電できる場所は一カ所もない。
八雲より倶知安は標高が高く、EVにとっては負担が大きくなる。せめて下りのルートを選びたいという思いから、ルートの進行方向を決定した、という経緯があった。
でも。
実際に走ってみると、羊蹄国道と名付けられた国道5号線は上り下りを繰り返し、さほど「下っている」という実感はない。上り坂ではどうしてもアクセルを踏むしかなくて、電流計(アナログ)の針が大きく振れる。
大丈夫か?
「未体験」ならではの緊張感を味わうドライブだ。
倶知安から約75km。長万部にさしかかるあたりで、バッテリー残量がおよそ30%程度になったことを示す警告灯の点滅が始まった。目指すディーラーまでの距離は30kmちょっと。途中、黒松内からは、できるだけスムーズに走るために自動車専用道&道央自動車道を利用した。iPhoneのナビは、そのまま最寄りの八雲ICまで走るルートを示しているが、指先でちょこちょこと地図をいじってみると、道央道は八雲の手前で少し山に入っていく箇所があるようだ。ずっと片側1車線の高速道路で電池切れを起こして止まるのは最悪だ。念のため、目的のディーラーまで25kmほどを残した国縫ICで高速を下りて国道を走ることにした。
EVで走っていると、電池残量を睨みながらいろんなことを考える。
運転する自分が「パイロット」になった気分だ。
村上市のディーラーさんで、リーフをモニター試乗したけれど「充電のことばかり気になって面倒だ」と、購入を見送った人がいると聞いた。
考えるのが面倒ということだろう。
でも。
たとえば私自身を省みると、エンジン車を運転している時にもそれなりにいろんなことをインプットして、休憩場所や給油場所を考え、スムーズなドライブをするために頭はぐるぐる回っているように思う。
電気自動車を面倒と感じるのは、きっと「未体験」の緊張感なのではないかとも思う。
今はまだ世の中は電気自動車に優しいし、慣れてしまえば、結構平気なものだ。
そう、大丈夫。
前方の右手に、目指す日産ディーラーの看板が見えてきた。
いつものことながら「QUICK CHARGE」という文字が輝く看板が、なんとありがたく見えることか。
充電器の前にEVスーパーセブンをつけて、出てきてくれたスタッフの方に充電をお願いする。
500円を支払って約30分のチャデモでチャージ。
充電中はショールーム内のテーブルでドリンク(今回は、ほうじ茶をチョイス)を出していただいて、メールのチェックなどをしていると、江差町の名物である「五勝手屋羊羹」まで出してくださった。
世の中はまだ、電気自動車に優しいのだ。
【函館日産自動車 八雲店】
前地点からの距離:108km 旅の総走行距離:1248.2km
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