本当の復興が始まる時
南三陸さんさん商店街へ行ってみた。気仙沼の紫市場と同様に、復興に向けて作られたプレハブの商店街だ。
あいにくの雨の昼下がり。商店街は閑散としていた。いろんな、たくさんのお店が集まっている。なかでも、明治時代創業というのれんを掲げた『及善蒲鉾』という店のたたずまい感慨深かった。津波に押し流されそうになった店の歴史を、踏ん張って、守っていらっしゃるのだろう。
商店街の中央にある大きなテントには、東北楽天イーグルスから、選手たちの激励のサイン寄せ書きなどが掲示されている。復興に向けて、この場所にたくさんの笑顔が集まっているのだろう。
駐車場に戻ると、2人の女性がEVスーパーセブンをしげしげとのぞき込んでいる。
イスラム教徒のヒジャブ(だっけ?)を身につけているのが、千葉県から来た金子ハウワーさん。ショートカットの女性は、地元の渡辺直子さん。
金子さんは、震災直後からボランティアで何度も被災地に訪れて、南三陸で知り合った渡辺さんと意気投合。今も、月に数回くらいのペースで南三陸へ応援にやってくるという。
渡辺さんのご家族は、地元でタコ漁や牡蠣養殖などの漁師をやっている。というか、やっていた。
津波で牡蠣いかだは壊滅。今は、復興に向けて共同で設置した養殖施設などで漁師の仕事を続け、「国から給料をもらっている」生活だ。
いわば、復興支援に支えられた生活。渡辺さんは、いつ「支援」が途絶えてもうろたえたりすることがないように、タコ焼きや海鮮フードの屋台を始め、各地のイベントなどに出かけている。
南三陸町の中心地である志津川で水揚げされるタコは「西の明石、東の志津川」といわれるほどの名物という。
知らなかった。。
明石のタコは明石海峡の海流にもまれ、豊富なエビ餌を食べているから美味しいと聞いたことがある。志津川のタコはなぜおいしいのかと尋ねてみると。
「志津川のタコは、アワビを食べてるんですよ」と金子さんが教えてくれた。
渡辺さんは、船から水中めがねで海底を探り、長い棒でアワビやウニなどを獲る漁もする。普段は貝殻からひだを出してでれぇっとしているはずのアワビだが、近くにタコがいると貝殻に身を縮めて警戒しているらしい。
ときには。
棒でウニを引っかけて持ち上げているときに、海中でいきなりタコがウニに食いついてきて、一緒に獲れたりすることもある。
まさに、鴨ネギならぬ、ウニタコ?
いい餌には、おいしいものが寄ってくる。
そんなわけで、駐車場に停めているだけで渡辺さんと金子さんとの出会いが釣れてしまったEVスーパーセブンは、やっぱり最高の「餌」なのだ。
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「今はまだ、ゼロの段階なのよ」と、渡辺さんが話してくれた。
地震と津波でゼロ以下の状態に突き落とされて。支援のおかげでゼロにまで戻ることができた。
でも、渡辺さんや志津川の漁師さんたちにとっては、自分の船を取り戻し、漁業権を取り戻し、自らの力と判断で漁の仕事をできるようになってこそ、「1からのスタート」にたどり着ける。
「今はまだ、復興の準備をしている段階なの」
共同いかだでの牡蠣養殖は、あと2年ほど続く予定だという。
んだねー。復興するまで見守り続けていきたいです。