TATEUCHI_03030

【舘内レポート】喜び的最適値

今日は10月8日。確実に水曜日。いや火曜日だ。

朝6時半に起きると、曇り。道路は濡れている。しかし、ホテルを出る頃には、太陽さんさん。暑い。その中を帽子もかぶらずに、女川のかまぼこ屋さんへ、EVスーパーセブンに乗って行く。日焼けして真っ黒。セブンは楽しい。寄本さんが買ったこの店の笹かまぼこを松島の公園で食べた。とてもおいしかった。まるでEVスーパーセブンの走り心地のようだった。

アウトランダーPHEVについて書き加えておこう。

まず「PH」よりも「EV」を大きく書くという根性に敬意を表したい。つまり、アウトランダーPHEVはハイブリッドではなく、電気自動車なのだと、三菱自動車の企画者は決意し、実行したということなのだ。なぜか。ほんとうのところはわからないが、ハイブリッドよりもEVが良いということなのであろう。

ポイントは“良い”という中身である。

日本の自動車の企画、設計、生産の基準は、第一に品質、第二にコスト、第三に効率である。これらに優れていると良い自動車と呼ばれる。しかし、この基準からは企業の顔は見えても、ユーザーの顔は見えてこない。生産者サイドに立った企業に都合の良い基準である。

もちろん、品質が悪くては困る。価格が高すぎては購入できない。だが、この3つの基準に優れているからといって、自動車としての魅力があるとは限らない。ユーザーが“良い”自動車と思うとは限らない。ユーザーは、魅力あると感じられる自動車であれば、たとえ壊れそうでも、高かろうと、効率が悪かろうと、サイフをからっぽにしても買うし、大蔵大臣である奥様を口説いても買うものだ。

ユーザーは、魅力ある自動車をもって良い自動車という。ただし、人生に興味のないユーザーは、安ければ良い自動車だと思って買ってしまう。残念である。

アウトランダーPHEVにおける“良い”点は、書いてしまえばなんてことはないのだが、スムーズな発進、力強い加速、SUVとして世界最高の静けさなどである。だが、最大の魅力は運転の楽しさだ。いつまでも乗っていたいと思わせるところである。

アウトランダーPHEVをお借りしているからというわけではないが、他のPHV、たとえばプリウスPHVやアコードPHVよりも、ずっと運転が楽しいし、その楽しさの時間が長い。つまり、搭載している電池の量が多いので、長い距離をエンジンなしで、モーターだけで走れるというわけだ。これはユーザーの心を大いにそそる。さらに、徹底的に静粛性にこだわっている。一番静かなPHEVだ。“EV”にこだわっているからできたことだ。

効率を考えれば、重さ、搭載スペース、コストからいって電池の搭載量には効率的最適値がある。あるいは、ユーザー調査という数値に従えば、PHVのユーザーの乗る距離はたかだか20kmそこそこだから、その距離を走れるだけの電池でいいということになる。

だが、これでは、大衆という顔のない人間もどきは満足させられても、山田さんの顔も、鈴木さんの顔も、斉藤さんの顔も見えず、山田さん、鈴木さん、斉藤さんというみな違う顔をもった、一人ひとりの生身の人間を満足させることはできない。

アウトランダーPHEVは、効率的最適値ではなく、喜び的最適値で電池の搭載量を決めたに決まっている。

生身の人間は、生命を食らい、屁をひり、糞をし、喜び、泣き、笑い、怒る。生身の人間たちを満足させるには、自分も生きている一人の人間として、(品質、コスト、効率といった“数値”はひとまずおいて)自分が喜べる自動車を企画し、設計し、生産することだ。数値は、屁もしないし、糞もしないので清潔だろうが、喜びもしないのだから。

アウトランダーPHEVに乗ると、この自動車の企画者と設計者と生産者は、生きている生身の人間であることが40年近くも自動車評論家をやっている私にひしひしと伝わってくる。このEVがあることを三菱自動車は誇りに思っていい。ただし、純EVならもっといいが……。

EVスーパーセブンとアウトランダーPHEV。とても良い組み合わせである。共通点は、両方とも乗った人を生き生きさせてくれることだ。

(舘内 端)

 

<舘内レポートアーカイブ>
愛しい出会い 2013/10/16
フェスティバルの秘密 2013/10/16
海や地球の愛し方 2013/10/9
喜び的最適値 2013/10/8
3×5=15=無尽蔵 2013/10/7
溶け出す、からだ 2013/10/6
魂の置き場 2013/10/5
八戸への感謝 2013/10/4
 


コメントをどうぞ