女川の『高政』へ、再訪。

2013年10月8日。
今日の朝イチは、石巻から女川へ走り、笹かまぼこの名店『高政』へ。

昨年の夏、気仙沼『福よし』が復興して再オープンするのを、日産リーフでひた走って取材に来たとき。今回と同じルートで三陸海岸を南下して、高政を訪問&急速充電したことがある。

そのときは「取材」ではなく「充電」に訪れたつもりだったが、運良く、取締役社長室長兼企画部長(跡取り息子さん?)の高橋正樹さんにお会いすることができて、話を聞けた。

でも。

日刊SPA!で不定期連載している『日本をつなげ!プロジェクト』で記事にするとお約束しておきながら、私のうっかりが重なって記事にできないままでいた。

なので。

今回の旅では、必ず再訪して、高橋さんの「思い」を伝えよう、と考えていた。

【高政 女川本店『万石の里』】

前充電地点からの走行距離:22km 旅の総走行距離:1949.6km

高政は、地元ではことに名高い笹かまぼこの名店だ。工場見学もできる女川の本店『万石の里』には、電気自動車用の急速充電器が設置されている。

まだ真新しい工場と本店の建物が完成したのは、2011年の夏。津波で大きな被害を受けた女川だが、建設中だった場所は津波が突き抜けた経路からはわずかに外れていて難を逃れた。

新しい工場は、(おそらくは)将来の社長である正樹さんのアイデアで、太陽光発電を導入して工場などの電力に活用。EV用の急速充電器をいち早く設置する計画になっていた。津波で町の多くが破壊され、ある意味で贅沢な計画をそのまま実行するかどうかは迷ったが、難を逃れたからこそ次世代につながる試みに臆するべきではないないという思いから、計画通り、発電施設も充電施設も設置した。

被害の大きかった女川の港周辺は、まだ荒れた土地が広がってはいるものの、盛り土などの工事が本格化しているようで、土埃をあげながらひっきりなしにトラックが走っている。

震災直後は全国や世界から届いた支援も、最近は少し落ち着いてきた。

津波から2年以上が経ち「何を支援すればいいかわからない」という人もいる。

「復旧と、復興は違うんですよ」と、正樹さんが話してくれた。

津波直後は、被災した人たちの命をつなぎ、生きていく場所を作ることが大切だった。それが復旧だ。

でも。

これからの復興では、被災者たちがそれぞれの仕事で収入を得て、将来に向けての暮らしを支え、夢を育てていかなきゃいけない。

「復興に必要なのは、復旧支援を語るときにタブーのように言われていた『お金』こそが大事なんです」

これはもちろん「寄付を募る」といった意味のお金ではない。

被災した人たちが仕事に戻り、生み出した価値でお金を稼いでいくことだ。

「うちのお店で蒲鉾を買ってくださった方が、これくらいしかできないけど、と謙遜されることがあります。でも、謙遜なんてする必要はまったくなくて、被災地で生み出された商品を、買ってくださることこそが大事です。うちの蒲鉾の味には自信をもっていますし、女川にはほかにもいっぱいおいしいものがある。買ってくれた人が女川のおいしいものを食べてハッピーになってくださることが、女川で生きるわたしたちにとってもハッピーなんですよ」

復旧の支援は絆や思いやりが支えてきた。

しかし。

復興は、被災地で生み出される価値が大切で、買ってくれる人をよりハッピーにできる商品やサービスを、被災地のみなさんの努力で生み出していく必要もある。

震災で破壊されたところからの再スタートだからこそ、生み出せる価値もあるだろう。

「最近、景気対策がニュースで話題になってますけど、日本全体の好景気の発信地が東北の被災地になれればすばらしいですね」と高橋さん。

今回は、機を逃さぬうちに、ひとまずはこの旅ブログの記事として書き留めさせていただいた。

充電が終わり高政を出発しようとしていると、「このステッカーを貼っていってくださいよ」と、ショップにならんでいた『がんばっぺ女川』のステッカーをもってきてくださった。

喜んで!

高橋さん自らの手で、助手席のパネルに「がんばっぺ」ステッカーを貼っていただいた。

いい感じ、だと思う。

 

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