種市の「はまなす亭」
国道45号線を走り、岩手県に入る。次は洋野(ひろの)町の種市という漁港を目指す。
ここは、潜水夫による漁がさかんで、「ほや」などの特産地として知られている。
私は10年近く前、ほやの取材で訪れたことがある。それまで、ほやとか「なまこ」は食わず嫌いだった。でも、種市の港にあった『はまなす亭』という食堂で食べたほやがあまりに美味しくて、好物になってしまったという経験がある。
でも。東日本大震災。
この種市も津波に襲われ、はまなす亭も大きな被害を受けた。その後、お店を再開したという情報をネットで見つけていたから、今回の旅でぜひ再訪したいと思っていたのだ。
以前の記憶を頼りに港を目指す。
が。
はなます亭はどこにもない。。
舘内さんがEVスーパーセブンとともに海を眺めて旅情に浸る写真を撮りつつ、店に電話して場所を確認。
新しい店は、高さ12mの防潮堤の内側に再建されていた。
本当は、この店で昼食を食べようともくろんでいたのだが、種差海岸で食べてしまったからもう食えない。
時刻も14時を過ぎていたので、ほかにお客さんの姿はなく、お店の人に事情を話して記念写真だけ撮影させてもらうことにした。
照れながら、EVスーパーセブンの傍らに並んでくれた店のみなさんの笑顔は明るかった。
でも。
以前の店は、港のそばに鉄筋コンクリート2階建て。1階はほやなど海産物の直売所になっていた記憶がある。
新しい店は、オレンジ色に塗られたプレハブだ。
復興の道のりは、まだ「仮店舗」状態なのだろう。
幸い、高い防潮堤の効果もあって、種市では津波で命を落とした方はいなかったらしい。
とはいえ、防潮堤の内側に建てられた新しい店の窓からは、以前のように海は見えない。
防潮堤のある風景と、自然のままの海の眺め。
どちらが正しいか、なんてことは通りすがりの私がとやかくいえるものじゃない。
町の風景は、そこに暮らす人たちが選び取った「色」の積み重ねなんだということを改めて考えさせられた。
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