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雨の気仙沼漁港

2013年10月8日。気仙沼の朝はしとしとと港を濡らす雨だった。

泊まったのは、津波で荒れ地になってしまった港近くに、ぽつんと6階建てが残る『一景閣』というホテル。最上階の6階に、展望大浴場がある。

朝6時前。前日の出来事をブログに書く手を休め、朝風呂を浴びた。港を見下ろす展望テラスに出てみると、雨のとばりを突いて、岸壁からフォークリフトがバックするブザーの音や、怒鳴るように指示を出す誰かの声が響いてくる。

去年の夏、気仙沼を訪れた時には、聞こえなかった活気の音だ。

テラスがある休憩室の花の手入れに来た宿の女性スタッフと少し話した。今、岸壁に着いているのはサンマやカツオの漁船が多い。甲板に光の柱が目立っているのはサンマ漁船。あの光(港を見下ろす写真の右上あたり)はLEDライトで、復興の支援金を活用して新造した船のものらしい。とても毅然とした輝きがここまで届いてくる。

ホテルの周囲の土地も、ようやく「かさ上げ」工事が本格的に始まろうとしている。道が高くなってしまうから、今の1階玄関は半地下のようになってしまうのだと教えてくれた。

漁港に近いこのホテルは、もちろん津波に襲われた。昨年の夏は1階にも生々しい傷跡を残したまま営業を再開していたが、きれいに改装。改装する時には、道路のかさ上げで半地下状態になることを想定してデザインしたという。

新しい港の風景は、復興に取り組む人たちの、力と思いが描き出す作品だ。

サンマ漁船の照明がLEDに進化したように、もうすぐ、人智をふんだんに盛り込んだ、新しい気仙沼の港町が築き上げられることだろう。


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