【舘内レポート】魂の置き場
今日は5日。曜日の概念消失。またEVセブンの運転手。
こいつはいいやつだ。乗って半日もたたないうちに、すっかり私の体になついてしまった。
もっとなつかせて、私以外には尻尾を振らないようにしてやろうと、昨日からモーター/コントローラーのセッティングを始めた。
私好みのEVセブンにしてやろうという作戦の第一弾は、回生ブレーキの調整だ。なるべく多くの走行エネルギーを回収すべく、東北自動車の恩田さんに回生率を80%にしてくれるように頼んでおいたのだが、どうも強すぎて加速と減速が交互にしかも繰り返して起こってしまう。そのたびに車体がガクガク前後に動いてたまらない。ということで、ハンドツールを使ってデーターを書き換え、回生率を50%にまで下げた。
さっそく今日走ってみると、快適である。
ところが、電気量が減ってくると、またまたガクガクしだした。一定速度で走るべくアクセルの踏み加減を一定にすると、前後に車体が揺れるのだ。昨日までの症状と同じだ。これを防ぐには、アクセルをぐぐっと踏み込んで、パッと離すという曲芸的なアクセルワークが求められる。寄本さんは、雨の北海道でこのアイルトン・セナばりのアクセルワークを強いられ、へとへとになったということだ。だからといってEVセブンへの愛は変わらないそうだが……。
それで釜石のホテルに着くと、さっそくセッティングをやり直した。ハンドツールを片手にコントローラーのコンピューターとにらめっこだ。詳しいことは省くが、いろいろ試した結果、ようやくスムーズに加速、減速した。私好みのEVセブンになった。ということで、明日も私がEVセブンの運転を勤めるべく予定したのだが、「明日はアウトランダーPHEVに乗って感想を書け。アンタ、自動車評論家だろう」との事務局からの仰せである。残念!
元来、私はレースカーの設計とセッティングが仕事である。設計し、セッティングが決まってドライバーの思い通りに走ると、私もドライバーもハッピィーである。40代の終わりまでそんな日々を過ごしていた。幸せだった。
EVセブンをいじっていると、その頃の血が騒ぐ。改めて私のルーツというか、よってたつ場所を確認する思いだ。そんな場所とは、そこに行くととても安心でき、ほっとして、気持ちが落ち着き、優しくなれ、明日への希望がわくような所である。
今日は、津波で旅館と愛車ジャガーを失った小国君とお父さん、お母さんにお会いした。それから充電をお願いした釜石の三菱自動車のディラーでは、改装を終えたばかりのディーラーの建物を流された従業員の人たちにも会った。
小国君は、(新しい)家に帰ると、流された家のあった場所に必ず行くという。三菱のディーラーには、かつてのディーラーの建物の写真がパネルにして飾ってあった。魂の還る場所を失った人たちは、しかし、少し元気になったようだった。やがて新しいディーラーを、新しい民宿を、魂の新しい置き場とするに違いない。
エンジンレースカーの設計も、セッティングも止めて、もう20年近くたつ私は、ようやくEVという新しい故郷に根付けそうである。
明日はアウトランダーPHEVで走るぞ。
でも、ちょっとEVセブンにも乗りたいな。
(舘内 端)
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